第13話 止まらない感情
「あの、私は、その運命の人だと思って、会ったんですけど、向こうは違ったみたいで、
私は、その、王道な恋愛ドラマとか好きで、
でも自分からすごく好きになるとか、
これが運命だ!とか、そういう出会いはしたことなくて、
だから結局、いつも、そんなに好きでもない相手だけど、
流されて付き合ってみて、
それから好きになるかなとか、
そんな感じで、付き合って来て、
でも、結局最後は、他に好きな人ができたとか言われて、
振られちゃったりして、
こんなんじゃダメだと思って、
自分からもっと積極的に好きになって、
運命の人見つけるぞ!って意気込んで、
アプリで、じっくりと時間をかけて、
ちゃんと会話もして、1ヶ月後の今日に、
やっと会って、それで、その」
私は、またハイボールを一口、勢いよく飲んだ。
誠は、じっと私を見つめながら聞いていた。
「あの、で、きょ、今日会ったんですけど。
なんか、全然食事とか、レストランとか、予約している雰囲気じゃなくて、
あ、でも私がそういうのしておかないといけなかったのかなって思って、
まぁでも、出会ってから、歩きながら、どこかのレストランとか居酒屋とか行くのかなって思って、
そしたら、なんか、
なんか、ホテル行こうって言われて…なんか、
なんでって思って…」
勢いよく話していたけど、
あまりに虚しくて、悲しくて、また涙が溢れて来た。
「なんか、なんか、よく分からないけど、
私のこと好きになってくれる人って、
この世にいないんじゃないかなって思って…
なんかすごく虚しくなって…なんか、
なんか、わかんないけど、虚しくて」
あ、やばい、止まらない…
また涙スイッチが入った。
濃いめのハイボールと店の雰囲気とうまくいかない自分の人生に拍車がかかり、
涙がボロボロ止まらなかった。
「なんか、ホテル行こうって言われて、
虚しくなって、逃げ出して、渋谷の、全然知らない渋谷の街を、
ぐちゃぐちゃに泣きながら、
歩いてて、まわりは、みんなカップルとか、
友達とか、すごい楽しそうなのに、
すごく街は、うるさいのに、なんか、
私だけ、なんか、すごく虚しくて、
寂しくて…辛くて、なんかすごい、
何やってんだろって思って…なんか、
なんか、すいません…」
私は、ふと我に返った。
せっかく化粧直しをしたのに、また涙で顔がぐしゃぐしゃになっていた。
「どうぞ」
誠がそっとハンカチを渡してくれた。