連続小説

「恋愛依存」第1話
-抜け出せない女の奮闘記-

第1話 恋愛依存

私は人を信用しない
自分さえも信じられない

こうなったのは、全て過去の恋愛のせい

「君のことが誰よりも好き」
「ずっと一緒にいようね」

言葉巧みに言われて、絶対信じない、今回だけは絶対なびかない、もうアホみたいな恋愛はしないとあれほど何度も何度も何千回も誓ったのに、

私は今、アプリで出会った男と渋谷を歩いている

草野楓(くさのかえで)23歳
彼氏いない歴6ヶ月

いや、彼氏いない歴…2年かもしれない…

6ヶ月前の男は、付き合って1週間で、突然、「自分探しの旅に出る。フィリピンが呼んでる」

と言って、私の部屋を出て行ったきり、帰ってこない

自分探しの旅って普通インドだろ
フィリピンパブにハマって女ができたんだろ

私のような薄口醤油の顔に満足できなかったんだろう

もう恋愛なんかしない
もう男なんかいらない

お前が自分探しをするなら、
私は自分磨きをすると誓った
元日の1月1日、テレビCMでキラキラ光る笑顔の女優が楽しそうに資格をとって人生変えようと頑張っているのを観て、

これだ!と思って申し込んだ簿記の通信教育、届いた箱すら開けていない…

気がつけば、ベッドに横になってスマホを触り、もう一生触らないと誓い、消したはずの出会えるかどうか不明の出会い系アプリ、デスティニーを復活させた

懐メロ歌謡曲が大好きな友達が、熱唱してた山口百恵のいい日旅立ちを口ずさむ、

「あぁ、
日本のどこかに私を待ってる人がいる」

同じ歌詞を何度も脳内でループ再生させた

「あぁ、
日本のどこかに私を待ってる人がいる…いや、日本のどこかではない…世界のどこかかもしれない…」

そうか…このアプリだと海外までは網羅できない…

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気がつけば、また別のアプリを検索してダウンロードをしている始末…

「楓ちゃん?聞いてる?」

純粋色白坊主君が、わたしの顔を覗き込んで言った

私は今、アプリで出会った男と渋谷を行くあてもなく歩いている